バンクシー「Art Buff」塗りつぶされたグラフィティ

バンクシーの「Art Buff/アートバフ」は2014年、イギリスのフォークストンの壁に描かれた作品です。 buffとは、グラフィティ界のスラングで、警察や自治体、ボランティアなどにグラフィティが塗りつぶされることを意味します。
ービジュアルの詳細ー
「Art Buff」では、女性が台座に向かって立っている姿が描かれています。女性はヘッドホンを装着し作品のガイドを聴いています。視線の先は台座の上にあるはずの彫刻に向かっていますがグレーのペンキで塗りつぶされています。
ー主題とメッセージー
彫刻が見えていないにもかかわらず鑑賞を楽しんでいるその姿は、アートの本質を理解しているかどうかを疑問視させます。この作品は、アートの鑑賞が一種のパフォーマンスになってしまっていることを暗示しています。バンクシーは、この作品を通じてアートに対する真剣さや敬意が欠けている現代の消費文化を批判しています。
特に、アートが単なる視覚的な楽しみや流行として消費される状況に対する不満が表れています。
この作品は、アートを鑑賞する際の「SNS映え」を意識した行動や表面的な理解に対する批判を込めています。バンクシーの作品は、観る者にアートの本質や価値について再考させることを目的としているように感じます。
ー社会的背景ー
SNSの普及やアートが商業化される過程において、人々がアートを鑑賞する際、その体験が単なる写真撮影やSNSを通じて共有に終わることが多くなり、本来のアートの価値が損なわれているという問題意識の啓示を覚えます。
ーバンクシーと美術館ー
バンクシーは、ニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、大英博物館などに勝手に自分の作品を展示したことがあります。明らかに変な作品にもかかわらず何日間も誰にも気づかれませんでした。そのような痛快なエピソードからもわかるように「Art Buff」に対するバンクシーの想いが感じられます。
いっしゅう
画像引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/banksy